Irreglar Mind
第4章 大荒れの文化祭 - 1 -
文化祭の三日目、つまり最終日は日曜日で、西園寺高校の校舎とグランドは大入り満員状態だった。
うちのクラスは校舎の3階にある渡り廊下を通って別棟へ行き、さらに階段をのぼった4階にある、いわゆる僻地の第二視聴覚室を借りきって、お化け屋敷をやってる。
第二視聴覚室ってのは、ご大層な名前のわりにさびれたとこで、ほとんど何もない。
でも窓に暗幕がついてるから、部屋中真っ暗にするお化け屋敷にはうってつけ、ってわけなんだ。
俺は受付の係だったけど、金・土と二日も続けてやったから、今日はフリー。
彰子も同じで、俺たちは二人連れ立って校門まで行った。もちろん、美波の兄貴と樹を迎えるためだ。
途中で高江が俺を見つけて合流してきて、クラスの方は放っておいていいのかって尋ねたら、
「くだらん」
というお言葉が返ってきた、たった一言。
へぇへぇ、さようでございますか。
天才と呼ばれるような奴には、こういうドンちゃん騒ぎって、馬鹿みたいに思えるのかもな。
なんか、損かもな、そう考えるとさ。
「よぉ、瑠希。あれ、高江まで来てくれたのか。出迎えご苦労」
校門につくと二人はすでに来ていて、樹はふざけた調子でそう言いながら近づいてきた。
彰子と美波の兄貴は……勝手にやってくれという思いが暗黙のうちに伝わったんだか、すでにこっちのことなんて眼中になかったんだか知らないけど、いつのまにか消えていた。
仲良きことは美しきかな、うむ。ちょっぴり寂しいけどね。
「瑠希んとこのクラスって、何やってんの?」
樹が尋ねてきたから、お化け屋敷、って答えたら、
「なんだ、食い物じゃないのか」
そんながっかりしなくたって……。
「お前んとこは?」
今度は高江に聞いている。聞かれた方はというと、珍しく怯んだ様子で一瞬言いよどみ、俺はいたずら心から、代わりに言ってやったんだ。
「オカマバー」
これって本当だぜ。高江だって昨日女装してたの、俺は知ってる。
樹は目を丸くしてから笑いだし、笑い転げてしばらく止まらなかった。
きっと高江がオカマやってるとこ、想像してんだぜ。
「た、高江もやったのか……?」
瞬間、高江は真っ赤になって絶句し、黙って樹を睨みつけた。
俺はびっくりしながらも、笑ってしまった。
なんでびっくりしたかっていうと、高江があんな表情するとは思わなかったから。
すごく年相応に見えて、驚いた。
へぇ、樹の前だと、あんな顔もするんだ。
樹はそんな高江を見ながらにやにやと笑っていて、俺は高江にちょっと同情した。
だけど、それでも言わずにいられなかったんだ。
「高江、本物より女らしくてさ、綺麗だったぜ」
直後、高江の拳骨が俺の頭に命中し、俺は頭を押さえてしゃがみこんだ。
わーん、痛いっ!
でも、本当に綺麗だったんだよ、高江の女装姿。
すらっとしてて気品があってさ。
さっきのあれって、俺は誉め言葉のつもりだったんだけどなぁ……。