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Irreglar Mind

第7章 封恋 - 1 -

紗夜さんに会いたいという俺の願いは、思いがけなくも早々とかなえられた。

11月に入って最初の日曜日、俺たちは中原家で開かれるお茶会に招待されたんだよ。

お茶会だぜ、なんか優雅だよな……。

どうやら中原家ってのは大会社の社長の家らしくて、ということは樹っていわゆる「御曹司」。でもって紗夜さんは「御令嬢」。

ゆくゆくは樹が紗夜さんと結婚して会社を継ぐんだろうって高江が言ってた。

でもさ、たとえ血がつながってなくたって戸籍の上じゃ家族、姉弟だろ。結婚って、できないんじゃないのかな。

「血のつながらない兄弟間の結婚は法律で認められているんだ、無知」

なんだよぅ、素直な疑問を口にしただけなのにさ、意地悪な奴!

……と、まぁ、そんな感じで、とりあえず俺たちは中原邸にやってきた。

ああ、そうだ、さっきから「俺たち」って言ってるけど、それって誰のことか。

俺のほかに呼ばれてる人間だよな、つまり。

高江と、彰子と、美波(兄貴)。

俺とこの3人とでやってきたわけ。

中原邸はすっげーでかくて豪勢で、とにかく広いっ!

門から入って玄関に着くまでに橋があるんだぜ、橋っ!それも、こぢんまりしたやつじゃなくって、でっかいやつ。幅は約2メートル、長さ約10メートル。下にはちゃんと川が流れていて、でっかい鯉が泳いでやがったりするんだよな。

どっかの寺か神社に来たみたいだ、木もたくさん生えているしさ。

個人の家ってより、日本庭園のモデルって感じがする。

「うひゃー……すっげぇのな……」

俺はただひたすら感心して、高江の苦笑をかいまくった。だけど、こんなの見るの、生まれて初めてだったんだもん、しょうがない。

樹は俺たちが門の脇のインターホンを鳴らすとすぐに迎えに出てきてくれたけど、紗夜さんの姿は見当たらなかった。体が弱いってことだったから、外にはあんまり出ないのかもな。

樹の案内で玄関まで行って、そこで俺は「その人」に会ったんだ。

玄関口に車椅子に座って、紗夜さんはいた。

あの写真のままの笑顔で……違うな、本物の方が格段に綺麗だ。

車椅子に座ってるのは、足が悪いとかなのかと思ったけど、どうやら違うらしい。

聞けば、彼女が患(わずら)っているのは心臓で、できるだけ負担をかけないように車椅子を使っているんだ、ということだった。

そう説明してくれた高江の目はすごく優しくて、俺はやっぱりだと思った。

間違いないね、高江は紗夜さんが好きなんだ。

そう思ったら、すごく胸が痛かった。

理由はわかってる、ジェラシーだ。

俺は紗夜さんをねたんでる。

樹も高江も紗夜さんに夢中で、他の女なんて目に入らないって感じがする。

そんなふうに二人の心を独占している彼女が、俺はうらやましくて仕方がなかった。

樹が彼女に話しかけるたびに苦しくなって、どうしようもなかった。

「瑠希、紹介するよ。俺の姉さんの、紗夜」

樹に呼ばれて紗夜さんの前に立ったときは、情けないくらいガタガタで、足の震えが止まらなかったくらいだ。

早く帰りたかった。

会いたいって思ってた。でも会うべきじゃなかった。

紗夜さんに、会うべきじゃなかった。

俺は青ざめながら、紗夜さんに軽く頭を下げて、自分の名前を名乗った。

白山瑠希です、そう言い終える前に心臓に鋭い痛みが走って、俺はぐらりと地面が揺れるのを感じた……違うな、多分揺れたのは俺の方だ。

「瑠希、どうしたっ?」

とっさに樹が手を伸ばして俺を支えようとし、それより一瞬早く高江が俺の腰に腕を回して、俺を抱き上げた。

「たか、え……」

俺は何か言おうとして言えずに、高江が安心させるようにうなずいてくれるのを視界の端に、気を失った。

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