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未来に見る夢

「……ヒゲでも伸ばそうかな……」

ぼそり、そんな言葉が隣りから漏れたものだから。シャナンは泉に顔を映して難しい顔で唸っているオイフェを呆れた顔で見つめた。

「…なんだよ、いきなり?」

はっとしたように顔を上げ、オイフェは少しバツが悪そうに笑う。

「いやな……最近、どうも子供たちになめられている気がしてな。…そうは思わないか、シャナン」

「あの子達が生意気盛りなのは今に始まったことじゃないし…ヒゲを伸ばしたところで、お前に迫力がつくとも思えんのだが」

「そうそう、それだよ」

急にシャナンの顔にびしっと指を突きつけ、オイフェは力説する。

「大体お前に影響されているところが大きいとわたしは思う。昔からの付き合いで気心が知れているとはいえ、わたしのほうが年長なのだからもう少し敬ってしかるべきなのではないかな、シャナン。シャナンがそうだから子供たちも真似するのだと…」

「いまさら?」

すっぱりと切り返されて、むぅ、と唸るオイフェにシャナンはたたみかけた。

「いままでそんなことひとっことも言ってこなかった上に、堅苦しいのは嫌いだとかなんとかいって、こういうふうになるのを喜んでた節もあるくせに、いざやばいかもとなったときに限って自分だけ棚上げするのはどうかと思うけどな。そういうところこそ、子供たちが真似しちゃ困ると俺は思うわけだが」

むうぅ、とさらにオイフェが唸った。その肩をシャナンはぽんと叩く。

「まぁ、いいじゃないか。度が過ぎるのは困るが、多少生意気なのも元気で。それくらいでないと、世の中はひっくり返せないさ」

時がくれば。嫌でも自覚する。子供たちも。自分も、オイフェも。けれど、まだ彼らは幼くて。「その時」はまだ「いずれ」でしかない。だから。

「甘えられるうちに甘えておいたほうが……いいんだ」

呟くシャナンに、オイフェも少しだけ遠い目で頷いた。ティルナノグの子供たちは、やっと十を過ぎたばかり。…けれどあの年頃には自分たちはすでに戦場にいた……。

その厳しさを知っているから。実際に戦いの中武器を取って走り回ったわけではないが、それでも身をもって体験しているから。

今はまだ、穏やかな時のなかに身を浸らせておいてやりたい。

「…でも、とりあえず…ヒゲは伸ばしてみようかなぁ…」

それでもオイフェがそんな呟きをもらすので、シャナンは苦笑した。そうして思う。

ただ、ヒゲを伸ばしてみたいだけではないのかと。

案外似合うかもしれないな、と思った。けれどそれは内緒で。

「確実に老けて見えるぞ」

笑いながら告げた背中に、またうーんと唸る声が聞こえた。

- fin -


FE聖戦誕生祭19作目。お世話役二人のお話。気がついてたら彼らが余ってしまっていた、なんてことは……ありませんよ?もちろん。

2003年5月14日 凪沢 夕禾

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