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ただ前を見つめて

なぜ、と思った。

なぜ、ここにいるのはわたしなんだろう。あの人ではなく。

門の外。川の流れのうねり、あの音にも似て。低く恐ろしげな音が響いてくる。

戦の、音。

幼い頃から願いは、ただ穏やかに暮らしてゆくことだった。穏やかに、静かに、優しい時間を───愛した人と、共に過ごしてゆければ。

澄んだ蒼い目の少年を、エーディンは思い出す。幼馴染、というには少しだけ自分から距離を開けすぎた、彼。

もしもお前が望むなら、あの方の元へ嫁ぐことだってできるんだよ……そう、父は言った。けれども。

幼い心をときめかせたその言葉は、時を経るにつれ、大人になるにつれて現実味を帯びないものへと変貌していった。ただ優しいだけの未来を信じていた子供は、けれどいつまでもそこにとどまってはいない。夢見る少女であったからこそ、現実と理想の違いに気がついた。

彼の自分を見るまなざし、そこに求める甘さはないことを、知った。知ってしまった。

それでも彼は十分に優しかったし、友人として大切に扱ってくれた。そこからできるだけ離れようとしたのは、自分だ。そばにいるのが、辛かった。

「お兄様もいい年なのに。こんなに素敵な方がそばにいるのに、どうして結婚なさらないのかしら」

いつだったか。

エスリンがそう言って小さなため息をもらしたことがある。少女特有の勘の良さで、兄とエーディンの間にある微妙な距離を察したらしかった。

恐らくシアルフィの重鎮も、ユングヴィのそれも、エスリンと同じことを思い、また願っているだろうことはエーディンとても薄々感じていた。今はまだ表面化していないものの、時期さえくれば、あれよあれよという間にまとまりそうな気配を、それはすでに見せていた。

そうなれば、きっと流される。わたしも……彼も。

周囲の声に反対する理由を、二人とも持ちはしない。ただ、心がすれちがっているだけ。

それでも日々は穏やかで。終始物思いに沈むほど、自分はそこにとらわれてもいなくて。まさか戦渦に巻き込まれるだろうなどとは、考えもしていなかったから。

ユングヴィ公爵である父の不在中に起こった、ヴェルダン王国の裏切り。友好条約を蹴散らして攻め込んできた、野蛮な男たち。

約束は守られるためにあるのだと、信じていた…そこが自分の、甘さなのだろうと思う。だから、人の上に立ち得ない。統べる立場に生まれながら、そこに立てない弱さ。信じるだけでは駄目なのだ。信ずるに足る足場を、自分で築いておかなければ。よくよく、自分で知っている。

もしあの人なら。あの人ならこの場をどう打開してゆくのだろうか。

遠く近く聞こえてくる雄叫びに心を震わせながら、エーディンはずっと、一人の人を思い出していた。

敵は、もうすぐそこまで来ている。決して多くはない民を、どう救えばいい?

あなたなら、どうしますか。…お姉さま───!!

幼い頃に生き別れた双子の姉。彼女なら、どうするだろう。静を好み、乱を嫌った自分とは違い、すでに彼女は将としての才を現しはじめていた。

ゆくゆくは彼女が領地を統べてゆくだろうと思われていたのだ。失われた今もなお、彼女を惜しんであがる声は少なくない。…まして、こんな状況ならば。

「ブリギッド様がおられれば……」

何度、そんな言葉を耳にしたことか。そうして、はっとしたように自分から背けられる顔。…わかっている、皆、わかっているのだ。

わたしには、何の力もない……。

敵を沈める力も、民を奮い立たせる力も。昔から、ただただ脇で支えるだけの役割に自ら回ってきた。

けれど。けれど、今…ほかに、誰ができるというのか。自分のほかに、一体誰が……?

「……ミデェール」

低い声で、臣下を呼んだ。弓騎士隊の中から一人の若者が進み出る。その瞳を見つめて、エーディンは尋ねた。

「あの日の約束を、覚えている?」


「なぜ、泣いておいでなのですか」

白いカトレアの咲く夜。あれはリング卿の出立の前日だった、とミデェールは思い出す。卿の無事と成功を祈る宴の途中で、彼は彼女と会ったのだ。

いまだ見習騎士でしかなく身分も低いミデェールにとって、宴はただの仕事の一環でしかない。集う人々に害為すものがないか、会場付近を見回るのがその勤め。入隊時に賜った鉄の弓と松明を手に、花園のそばを通った時のこと。

女のすすり泣く声が聞こえた。

一瞬ぎくりとして立ち止まったミデェールの脳裏を、仲間内でまことしやかに囁かれていた噂話がかすめていく。

『夜中に白カトレアの園に行くとな、女がぼうっと立っているんだそうだ。不思議に思って近づけば、それは昔行方不明になられたのブリギッド様の成長されたお姿で、近づいたものにこう囁くんだとさ…「ウラメシヤ…」…』

…まさか、そんなはずは。自分を叱咤し、松明をそうっと掲げる。

ただの噂だ。それにたとえもしも万が一本当だったとしても、話によれば危害は加えられないようだし…気にかかるといえば、あのわけのわからない「ウラメシヤ」とかいう単語だが。いったいなんの呪文だろうか。

考え込みそうになって、いやいやとかぶりを振った。とにかく、不審人物を見極めるのが先だ。

回れ右して元来た道を戻りたくなる衝動をこらえ、ミデェールは先に足を進めた。泣き声のする方へと。

そうして彼は月明かりの下、濃厚なカトレアの香が漂う園で、彼女と出逢ったのだった。

「エーディン様……」

一目につかぬ場所で隠れるようにして涙に濡れていたのは、リング卿の娘であるエーディン公女。美しい姫君だという噂に違わず、夜空の月にも白く咲き誇るカトレアの花にも引け目を取らない美女だった。

遠目に見かけたことは何度かあったが、面と向かって会うのはこれがはじめてだ。相手は自分よりはるかに高い身分の…いや、主君の娘。

明日よりは留守となるリング卿にかわり、ユングヴィの最高責任者となる人物だ。畏れ多くて彼は思わず膝を折った。

そんな彼を涙に濡れたまなざしで見やり、彼女は小さくつぶやく。

「……一人にしておいて。おねがい」

そうしてそのまま、離れていこうとするから。ミデェールは思わず言ってしまったのだ。

「なぜ、泣いておいでなのですか」

引き止めようと、思ったわけではなかった。ただ、放っておけなかったのだ。こんな場所で一人で何を悲しんでいたのだろう。父との別れが恋しくて、だから?それとも別のなにか?理由がなんであるにしろ、自分がここに来てしまったことで彼女はさらに身を隠す。園のさらに奥へと。そうしてまた、一人で泣くのか。

ミデェールの問いに、公女は足を止めた。振り返る。

「…わたくしを探しにきたのではないの?」

誤解を受けていたことに気づき、ミデェールは咄嗟に首を横に振った。

「いえ、お…わたしは、見回りをしていただけで…。お邪魔してしまい、申し訳ありませんでした」

その答えを聞き、エーディンの足が再びこちらに向けられる。顔を上げればそこにあるのは、寂しげな表情。涙の跡の残る、いまだきらきらと光る瞳で、彼女はミデェールを見ていた。

「ごめんなさい、てっきり…宴に戻れと言いに来たのだと思って……。…そうね、わたくし一人抜けたところで、誰も気にしないのだった…」

言葉の終わりは、自嘲めいた独白のようで、ミデェールはなんと返したものか言葉に窮する。そんな彼の隣りにエーディンはすとんとしゃがみこんだ。

「泣いていたのは、秘密にしてね。心配をかけたくないの」

誰に、と彼女は言わなかったが、恐らく公爵にだろうとミデェールには想像がついた。留守に残す娘が気弱になっていると聞いては、公爵とてもさぞ心配になるだろう。

そうわかるから素直にその願いを聞こうという思いになるが、その一方でむくむくとわきあがるものがある。

では、誰が彼女を心配するのだろう。一人で泣いて、一人で抱えて、いったい誰が。

そう考えたら、とても黙っていられなくて。

「理由をおっしゃってくだされば、秘密にいたします」

そんな、畏れ多いことをしゃあしゃあと言っている自分がいた。エーディンの瞳が驚いたように見開かれる。ついで彼女はくすくすと破顔した。

「面白い方ね。…ただ、寂しかっただけよ。お父様がお出かけになるから…だから少し、寂しかっただけ」

「本当に?」

尋ね返したミデェールに、エーディンは笑顔を曇らせた。視線を落とす。…やがて。

「…寂しいのは、本当。でもそれは…お父様がいらっしゃらないからじゃないわ。……誰も、期待してくれないのが、寂しい」

つぶやきのような本音が、語られた。ミデェールははっと息を飲む。彼とて多少の噂なら耳にしていた。留守を預かるエーディン公女は、あまりにも頼りないと。すべてをあの方に任せてもよいものか不安だ…そうつぶやく人々が少なからずいることを、知っていた。

それが本人の元に届いてしまったのだろう。父の出立を祝う宴席を離れ、涙を流さねばならないほどに、鋭い刃となって。

「お姉さまがいらしたら…きっと皆も安心するのに」

落としたため息は、姉の不在を嘆いたものか、己の不甲斐なさを嘆いたそれか。ミデェールにはわからない。だが、その細く頼りなげな姿に感じた思いは確かなもの。

「けれどもわたしは…あなたを守りたいと思います」

驚いたようにエーディンが顔を見る。

「本当に?」

声に宿るは、縋るような響き。こんなにも彼女は求めていたのだ、とミデェールは思った。信じてくれる人を、必要としてくれる人間を。自分のために身を投げ出してくれる者を、求めていた。

「はい。わたしはあなたの臣下ですから」

膝を折った状態のまま、さらに低く頭を垂れる。服従と忠誠であなたに仕える、そう伝えるために。

「では…わたくしが命じれば、それに従ってくれますか…?もしそれが、国のためにすべてを捨てよ、というものだとしても?」

震える声で問う少女…明日からの主君に、ミデェールは頭を垂れたまま、はい、と答えた。

「この弓と…バイゲリッターの誇りに誓って」

彼の忠誠にエーディンは泣き出しそうな笑顔で、応えた。


「はい、覚えております」

ミデェールがしっかりとうなずくのに対して、エーディンは、では、と低く告げる。

「急ぎ、シアルフィへと向かってください」

ミデェールの目が大きく見開かれた。周囲がざわめく。反論を許さぬ口調でエーディンは先を続けた。

「すでにヴェルダン軍は侵略を始めています。ぐずぐずしている暇はありません。このままここでじっとしていても助けは来ないでしょう…こちらから呼ばぬ限り。まさか友好条約が破られるなどと誰も思いはしなかったのだから…わたしたちとても」

シアルフィに助けを求めたところで動く保証はない。ユングヴィ公爵ともどもシアルフィ公爵バイロンも遠征にでかけている。留守を預かるシグルド公子の心に賭けてみるしかなかった。

「シアルフィとて、ユングヴィが陥ちるのを穏やかに見てはいられないでしょう…ここが落ちれば、次に狙われるのはシアルフィなのだから」

グランベルの西端ユングヴィの西にヴェルダン王国、東にグランベル領シアルフィ。間に挟んだユングヴィが陥ちてヴェルダン軍が勢いづけば、その先にある土地に目を向けるのは想像に難くない。いったんグランベルの領内に踏み込んだ彼らが、ユングヴィだけを陥として満足する理由などないからだ。

それに、きっと。

「シアルフィのシグルド公子は優しいお方。きっと助けに来てくださいます…だから、それを信じて、救援を求めて。その役目をあなたにお願いします、ミデェール」

まっすぐに見つめるまなざしに動揺を抑えきれず、ミデェールは尋ねる。いや、願う。

「なぜわたしなのですか、エーディン様。早馬ならば、他の者でもできます…わたしは、あなたのそばに…!」

「あなたが行ってください、ミデェール。ヴェルダンの包囲網を抜けていくことは厳しい。それでも確実にシアルフィまで辿りついてくれると…あなたならそうしてくれると信じるから…だから」

あの、蒼い瞳の青年に、伝えてほしい。ユングヴィの民を助けてと。

「いやです」

けれど。ミデェールは突っぱねた。

「わたしは最後まであなたのそばでお守りします。この国の騎士として…そう約束したはずです!」

あの日の夜の約束。最初に持ち出したのは自分。そう、そうだ。約束。

きゅっ、とエーディンは口元を引き締めた。もう、覚悟は決めたのだ。

「ならば、その約束を守りなさい、ミデェール!あなたはわたくしに言ったはずです。わたくしが命じれば国のためにすべてを捨てると。…だから、行きなさい。公女がいなくとも、救援がくればユングヴィは残ります。もうすぐお父様が戻られる。それまで持ちこたえればよいのです。だから、行って!これは命令です…!」

ミデェールの握り締めた拳がわなわなと震えだす。絞り出すように、彼が尋ねた。

「国のために、あなたを見捨てろと…そう言われるのですか……!!」

胸に刺さる言葉だった。それでも、決めたから。自分には国の守り方などわからない。軍の動かし方も、賢い立ち回り方も。けれどここを渡すわけにはいかないから。

あの夜、心に灯りをともしてくれたこの青年を、信じる。

「そうです」

ただ、一言。答えて顔を上げた。それきり、ミデェールの顔は見ない。門の向こう、高まる喚声に心がくじけぬよう唇を噛み締めた。

お姉さまがいてくれたら。お父様がいてくれたら。

それは願っても詮無いこと。今、ここにいるのが自分である事実を変えられはしない。ならば、立つしかない。ただ、前を見つめて。

「……しかと。しかと承りました…!」

低い声。押し出すように叫んで身を翻すミデェールの後ろ姿を視界の端に、どうか、と祈った。どうか、無事で。


「城門が破られました…!」

その言葉が伝えられたのは、ミデェールが去って、しばらく後のこと。周囲のざわめきと悲嘆の色に、エーディンは静かに席を立つ。

「エーディン様、どちらへっ!?」

そう、尋ねられれば。

「敵将のもとへ、出向きます。この城の責任者であるわたしを差し出せば、城は陥ちようとも民は守れる」

お前たちとてそれを望むのでしょう…?

声には出さなかった。言葉にはしなかった。けれどまなざしから伝わるものに、重臣たちは言葉を失う。

「道を開けなさい」

凛とした声で告げたとき、すでに敵は城内に侵入していた。剣戟の音と喚声、悲鳴、苦痛に喘ぐ声、血の匂い。

静かだった場所があっというまに戦場と化す。やりきれないものをこらえながら、エーディンは敵将の姿を探した。

どこ、どこにいるの!?

ようやくそれらしき人物を見出したとき、その頬をかすめた小さな痛み。弓兵に狙われた、と気づいて振り返った先、すでに次の矢をつがえた敵がまっすぐにこちらを見ていた。いけない、と気づいた時にはすでに遅く。矢が、放たれる。

その、瞬間。

「あぶないっ!!」

伸ばされた腕に抱き込まれるようにして地面に引き倒された。間一髪、すんでのところを矢が過ぎてゆく。

「ミデェールっ!?」

一体誰が助けてくれたのかと顔を見てみれば、先ほどシアルフィに向けて旅立ったはずの弓騎士の姿がそこにあって、エーディンは軽い混乱を覚える。

「どうして…あなた、行ったはずじゃ……」

「他の者を行かせました」

簡単にして明瞭に返る答えに、そうではなくて!と思わず声を荒げた。

「命令にそむいたことへのお叱りはあとでいくらでも受けます。今は、あなたを守らせてください」

ひたすらに、真摯な眼差し。思いがけずにたくましい腕に助け起こされながら、思わず心が緩んでしまいそうになるのを抑えて、エーディンは必死に首を振る。

「だめよ、それじゃ…わたくしが行かなければ、多くの人が苦しむ。多くの命が失われることになる。そんなのはだめよ」

「だからといって、あなたが苦しんでいい理由なんかない。あなたが悲劇の主人公を気取らなくなって、きっと何か方法があるはずなんだ!」

「そんなものがあれば、誰も悩まない…!」

そう、叫んでミデェールの腕の中を飛び出した先。

「そうさ、別に悩むことはない。お前が俺のもとにくれば、他のやつは見逃してやろう」

にたりと笑う男にぶつかって、捕らえられた。

ガンドルフ……!

ヴェルダン王国の第一王子…という肩書きが嘘のように思えるほどに、野蛮な雰囲気をもつ男。友好条約を結んだ間柄、国と国の行き来もあり何度か顔を合わせたことがある。その眼の奥に好色そうな色が仄見えて、エーディンは極力避けるようにしていたのだけれど。

よりによってこの男───!

「この…裏切り者!」

体の大きなガンドルフにしっかりと押さえ込まれ身動きできぬ中、唯一自由になる口で彼女は罵った。けれど相手はふんと鼻で笑っただけで、弓を構えるミデェールへと眼をやる。

「その方を放せ、下郎」

低く押し殺された声で、彼はガンドルフに告げた。要求する。けれども。

「お上品な国の割には、臣下に口の利き方も教えてないらしいなぁ?」

下卑た嘲笑と共にガンドルフが手斧を投げた…片手にエーディンを捕らえておきながら、それを感じさせぬ速さで。

「くっ……!」

すんでのところでミデェールが身をよじってかわすのと、ガンドルフの手下たちが彼に向かっていくのが同時だった。

「ミデェール!!」

斧兵相手に弓では圧倒的に不利だ。それも多勢に無勢。あっというまに取り囲まれ、姿の見えなくなった青年の名を、エーディンは必死に呼んだ。

「呼んだって無駄さ。俺の部下は容赦がないことで有名だからな」

引き上げるぞ、と部下に声をかける男のことを心底憎いと思う。生まれてこの方、これほどの怒りを感じたことはなかった。これほど人を憎いと思ったことは、なかった。

「ミデェール…」

犠牲になどするつもりはなかった。否、したくなかったのに。

小さく落したつぶやきに、まるで応えるかのように声が聞こえたのはそのときのこと。

「エーディン様、あなたは、あなたらしく……」

そのあとは、もう聞こえなかった。彼は何を伝えたかったのだろう。何を言おうとしたのだろうか。

「…逃げて……」

抱え上げられたまま、遠くなってゆく。見えない彼に向かって、叫んだ。

「逃げて、生きて……!絶対に、生き延びて……!!」

そうして、先の言葉の続きを、聞かせて。

何かにしがみつきたかった。すがりつきたかった。けれど今そばにあるのは、憎くてたまらない敵将の汚らわしい肉体だけ。だから、心を奮い立たせた。

きっと生きて、ミデェール。

そうして必ずもう一度会うのだ。

唇を噛み締めて、エーディンは誓う。たとえこの身が自由でなくとも、心だけは自由でいると。希望を捨てたりはしないと。

きっと、ミデェールは生き延びる。そして蒼い髪の騎士を呼んできてくれるだろう。そうしたら、自分はなんと言おうか。なんと言って彼を迎えようか。

ただ、前を見つめて。

未来だけを信じて。

エーディンは願う。

- fin -


FE聖戦誕生祭3作目。

あやうく収集がつかなくなるところでした。思っていたよりも長くなってしまったなぁ。本当はミデェールが旅立つところで終わるつもりだったんだけれど、それじゃエーディンがさらわれるあのシーンの説明がつかなくなってしまうので、じゃあもうちょっと先まで、と書いたらそれが大変だったわけなのですが。

ぶっちゃけてしまうと、「わたしを見捨てていきなさい」っていうこの一言が書きたかっただけとゆー(^^;

自ら臣下であることを課してしまったミデェールなので、この先どうなっていくのでしょうね。この時点でまだ両者に愛だ恋だという感情は芽生えてないので、あっさりとジャムカに持っていかれたりするのかもしれませんが。はてさて。

2003年2月11日 凪沢 夕禾