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Poem -Time Collection-

桜色の夢

あの頃わたしはぬくもりが欲しくて
ただ ただ欲しくて

あの頃わたしはひたすらに寂しくて
ただ ただ寂しくて

だから

差し出された手が 向けられた言葉が
ただ ただ嬉しくて

「そうして桜を見上げている君が とても綺麗だったから」

薄く色づきはじめた桜の木
はらはらと その色合いを散らす頃になっても
魅せられた魂にその景色は限りなく心地よくて
呆けたようにいつも いつまでも見ていたわたし
ただ ただぼんやりと
何を求めるのか 何に癒されるのかわからぬままに
それは 幾度となく何気なく見てきた風景であったはずなのに
それでもその年の桜は やけに綺麗で
ただ ただ綺麗で
ささやかれた言葉は
ただ ただ優しくて

淡い桜色に身を浸し 甘い夢にたゆたおうとしていた

けれども それでも忘れられぬ人がいた あの頃
鮮やかな緑が華を隠しはじめ 夢の時間は終わりを告げた
差し出された手を取ることはないまま
そして向けられた言葉は 想いは
ただ ただ切なくて

「きっと 君を忘れない」

それはもう戻れない過去の時間
戻る必要のない 夢の時間
わたしは今を抱きしめる とても幸せに抱きしめている
けれど あの切なさを あなたの想いを
あの 桜色の夢を
桜散る 緑萌ゆるこの季節
風に舞う淡い夢のかけらを目にするたびに
わたしは思い出す

それは
ただ ただ懐かしくて

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