Poem -Love Collection-
残り香
街の中
不意に鼻孔をくすぐる匂いにはっとした
視界の端
消えていく背中に見覚えなんかない
わかっているのに振り向かずにいられない
だってね
貴方と同じ 匂いがしたの
細くて長い貴方の指が いつものように
煙草の匂いに染まってく
抱きしめた背中も
貴方の抜け殻も 全部全部染まってく
ただいまと足を踏み入れたこの部屋が
無人の寂しい空間だとしても
この残り香があるから安心できるの
貴方の匂いにくるまれておとなしく待っているから
やさしくただいまと言ってね